【書籍】 「コンビニ人間」 村田 沙耶香 (著) 
2016/08/20 Sat. 17:29 [edit]
読後の第一印象は「このような小説が芥川賞を受賞するのか」というもの。
主人公は大学卒業後も就職せず、18年間もアルバイトとしてコンビニエンスストアで働く32歳の女性。彼女は小さい頃から様々なことで「普通ではない」を言われてきている。それは彼女自身が全く意識をしていない言動を周囲からそのように指摘されることで「私は普通ではないのだ」と自覚する。そして自覚をすることで周囲との関係を隔絶させることを選択する。
そして大学を卒業後にふとしたことがきっかけでコンビニでバイトをすることになるのだが、その環境が隔絶された自分の感覚とうまく適合させることに成功していく。その中で主人公は初めて「人間」として生きていくことができる感覚を味わう。
この隔絶の間にある壁は何なのだろう。勝ち組、負け組という区分けや、正規と非正規など、現実の世界には人工的に様々な壁ができ、その壁がはっきりと形を形成しているのが現在という時代なのかもしれない。そのような現実をコンビニという一つのバーチャルな世界として映し出した作品と言えるかもしれない。
現代という時代をうまく描きあわわした小説と言えるかもしれない。
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コメント
日経新聞の書評
日経新聞8月21日朝刊の読書欄で、市川隼という早稲田大学准教授の書評に次のような一文があった。著者のこれまでの作品で書き続けてきたテーマが「普通」と「異常」の壁だったようだ。以前の著作を読んでみるのも一考かもしれない。
「著者が過去の作品と人生で問い続けてきた、家族・性・愛情など様々な「普通」や「常識」を巡る疑問が、「コンビニ」という彼女自身にとり(デビュー前から働き続けた点で)最も馴染(なじ)み深く、我々読者も日々親しむ場所を舞台に、商品陳列の秘密や控室での店員たちの姿まで、興味深い細部と共に描かれる。」
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